Kiriko 江戸切子の代表的文様 vol.2 2025年9月12日 「江戸切子」の表面に刻まれた、細かな線で構成された美しい模様。それらは「文様(もんよう)」と呼ばれる、カットガラスに欠かせない要素です。今日まで、職人たちの手で、脈々と引き継がれてきました。 江戸切子の代表的文様 vol.1の記事はこちら同じ線を連続させたり、違うものを組み合わせたり。工房や職人によって、文様の表現にはさまざまなスタイルがあります。ここからは、数ある中から代表的な文様をご紹介します。 魚子(ななこ) 切子面の細かな光の反射が、まるで魚のうろこのよう。名前の由来は、魚の卵がたくさん連なっているように見えることからと言われています。古く「魚」は「な」と呼ばれていたため「な(魚)」の「子」で「ななこ」と読みます。その名から「子孫繁栄」の願いも込められた、江戸切子の基本的な文様の一つです。 菊籠目(きくかごめ) 縦・横・斜めの直線で連続する文様を繋ぐように表現する「菊繋ぎ」と、立体的な力強さのある格子文様「籠目(かごめ)」を組み合わせた伝統文様です。難しい2つのカットを同時に行うため、職人の高い技術が問われます。また、「菊」には「高尚」「高貴」、籠目は「魔除」という意味をもつため、縁起を担ぐ贈り物にもおすすめです。 菊花(きっか)/底菊(そこぎく) 伝統文様の中でも、よく見かけるものの一つ。その名の通り、菊の花のような形をしています。グラスの底面にあしらわれることも多く「底菊」と呼ぶことも。底に施すことで、覗き込んだ時にも華やかな印象で、切子(Kiriko)の魅力を堪能できるでしょう。ちなみに、菊の花言葉は「高貴」。華やかながら上品な印象も感じる文様です。 蜘蛛の巣(くものす) たくさんのカットを幾何学的に交差させていく、きらびやかで、職人の高い技術を感じる伝統文様の一つです。名前の通り、まるで蜘蛛の巣のようなその文様には「幸運を絡めとる」という意味があるとも。中央をまでカットを施す「芯あり」と、中央は丸く抜けている「芯なし」の2通りがあります。 * * * 切子(Kiriko)の文様の意味を知ると、選んだり使ったりする喜びが、ますます増していきます。また、別の機会に、ほかの文様もご紹介します。どうぞお楽しみください。※この記事は2021年執筆の記事となります。
Kiriko 江戸切子の代表的文様 vol.1 2025年9月12日 ガラス製品である「江戸切子」は、職人の手で表面に細かく線を刻むことで、その美しさを表現します。それらは「文様(もんよう)」と呼ばれ、カットガラスに欠かせない要素。現在まで、職人たちの手で、脈々と引き継がれてきました。文様は、同じものを連続させたり、違うものを組み合わせたりして表現します。工房や職人によってスタイルがあり、作品を一目見ただけで誰が手がけたかわかる職人もいるのだとか。さてここでは、数ある中から代表的な文様をご紹介します。 菊繋ぎ(きくつなぎ) 縦・横・斜めの直線を組み合わせ、連続する文様を繋ぐようにして表現します。細かなカットの交差が「不老長寿」を意味する菊の花に見えることから、こう名付けられました。「きく=喜久」とも書けるため、喜びが久しく繋がるという意味もあります。 八角籠目(はっかくかごめ) 竹籠の網目をモチーフにした格子模様「籠目(かごめ)」は、江戸切子の代表的文様の一つ。その中でも人気の文様が「八角籠目」です。八方へ広がるようなカットは、光をまとったようなうつくしさ。一方で、カットには高い精度が要求され、職人の腕の見せどころです。ちなみに「籠目」には、魔除けの意味もあるのだとか。 矢来(やらい) 江戸切子の中でも、もっとも基礎となる文様。斜線を等間隔にカットします。語源は、竹や丸太をクロスさせて組んだ囲いの「矢来」や、矢が飛んでいる様子など、諸説あります。「遣(や)らい」=の音から「入るのを防ぐ」。また、矢は「魔を射る」ことから、邪気を防いだり、魔除けの意味をもたせることも。 亀甲(きっこう) 丸いカットを連続的に施す「亀甲」。「亀甲繋ぎ」とも呼ばれます。語源は亀の甲羅です。亀は、日本で「鶴は千年、亀は万年」という言葉があるように、縁起のよい長寿のしるしとされてきました。古くから、おめでたい図柄「吉祥文様(きっしょうもんよう)」としても大切にされ、着物や帯、陶器など、広く用いられています。 七宝(しっぽう) 同じ大きさの円、または楕円を4分の1ずつ重ねた文様です。これを上下左右に規則正しく連続させたものを「七宝繋ぎ」と呼びます。語源は仏教用語から。仏教では、人の縁は7つの宝(金・銀・水晶・瑠璃・めのう・珊瑚・しゃこ)と同等の価値があると考えます。また、円(縁)は和に繋がる。人と人の和も大切に、という意味もあるそうです。さらに、「しっぽう」という呼び方は、この文様が四方に伸びていることから、広がりや子孫繁栄を願う意味を込める場合もあります。 いかがでしたか? 個性豊かな文様は、切子(Kiriko)の大きな魅力。また、別の機会に、ほかの文様もご紹介します。 江戸切子の代表的文様 vol.2 はこちらから※この記事は2021年執筆の記事となります。
Kiriko 鍋谷淳一さん(鍋谷グラス工芸社)・前編 2025年7月31日 鍋谷淳一 JUNICHI NABETANI 1966年、東京都生まれ。1949年に大田区で創業した「鍋谷グラス工芸社」の3代目として、4代目・鍋谷海斗氏とともに江戸切子と向き合う。2009年、伝統工芸士に認定。2013年には「江戸切子新作展」にて「経済産業省商務情報政策局長賞」を受賞する。 江戸切子に携わる人々が、なにを想い、一つひとつの作品や仕事と向き合っているのか。工房を尋ね、お話を伺う連載『Artisan Interview』。第2回目となる今回は、確かな技術とガラスへの高い知識をもつ江戸切子の伝統工芸士・鍋谷淳一さんです。 いろはを学び、腕をつけ、実感 ——ご家業が江戸切子の工房ですが、鍋谷さんが職人になるまでのお話から聞かせてください。 子どもの頃、友だちが江戸切子を知らなかったんですよ。それに、僕が子どもの頃は今ほど道具も進化していなかったから、作業は全て重労働です。毎日クタクタになるまで仕事する父を見ながら「これは大変だ」とも感じていたし、江戸切子は今後、産業として成り立っていないんじゃないかと思っていたんです。 23歳で社会人になったんですが、当時の僕は、やりがいは仕事がくれるもんだとばかり思っていました。同時に、やりがいがない仕事はしたくないとも思っていて。その後、やりがいは仕事がくれるものじゃない。自分で感じるものだと分かるんですけれど。江戸切子はやりがいがないって、勝手に判断していたんです。 だから、学校を卒業したあとはコンピューター関係の仕事につきました。時代として盛り上がっていく予感がしたし、憧れもあって。でも、入ったものの、希望の部署に入れなくって。ちょうど1年で辞めたんですが、同時に、自分のやりたいこともなくなってしまいました。 ただ、何もしないでブラブラしてるわけにもいきません。その時に父から「お前、江戸切子はやるのか? やらないのなら、自分の代で潰すのは簡単だから」と言われたんです。どうせ潰すんなら一回関わってみようと、25歳で江戸切子の世界に入りました。 最初から家業をついだわけじゃなくて、クリスタルガラスの製造で国内最大手の「カガミクリスタル」にお世話になりました。ここは、江戸切子の生地となるガラス製造を一貫して手がけています。素材の買い付け、熱で溶かす、溶けたドロドロのガラスを成形して、色付け、磨き。1から10まで手がけているから、職人としてものすごく勉強になりましたね。 カガミクリスタルには3年勤めるという約束で、1年目はガラスのいろはを学びました。2年目からは、関連会社で江戸切子を勉強しつつ、製造にも関わるようになって。触れれば触れるほど、少しずつ江戸切子への魅力を感じつつあったけど、この仕事で一生食っていこうという踏ん切りは、なかなかつかなかったですね。僕、心が決まるまでに時間がかかるんです(笑)。 江戸切子を創造的で魅力的なものだと思うようになったのは、33歳。ガラスに触れ始めて8年くらいです。(実家に)帰ってきて2〜3年経った頃、初めて自分がつくりたい形ができたんですよ。 そのあとしばらく、仕事をしながらも自分の作品をつくり続ける時期が続きました。仕事と作品を並行して進めるのは大変ですが、それぐらい江戸切子に惚れ込んだのでしょうね。2009年には伝統工芸士として認めていただき、作品が「江戸切子新作展」で「江東区優良賞」に入賞もしたんです。その後、お客さまが買ってくださるようになり、自分の作ったものが誰かに喜んでもらえることがとてもうれしかったし、江戸切子の未来に可能性を感じました。 工房のクオリティを保つために ——江戸切子と向き合ううえで、もっともこだわっていることは何ですか。 道具のメンテナンスです。毎日使うものを、いかに翌日も同じ状態で使えるか。それまでは「日々精進」みたいなことを思っていたんですけれど、2009年に伝統工芸士という称号をいただいてから変わりましたね。 そもそも、作品の出来は、道具ではそんなに変わらないと思っていたんです。誰がどんな道具を使おうと、多少道具がだめであろうと、職人の技術さえあればいいって。でも、それは自分だけの話で。日々の工房での製造は、自分だけでやっているわけじゃなく、働くみんなで調和を取りながらやっています。道具も、みんなで使っている。それなら、誰でも同じように使えるようにメンテナンスしないと、この仕事はみんなで一緒に上達していかないんじゃないかって考えるようになりました。 そう思うようになったきっかけには、道具の進化もあります。たとえば、カットするためのグラインダーという機械。昔は振動があって、あまりクオリティ高くカットできなかったのが、今は、ピタッ。スーッ。カット面がすごくきれいなんです。あと、ガラスを削るのに一番大事な、ダイヤモンドホイールという道具。削る場所によって、いろいろな大きさだったり、角度だったり、形だったりするダイヤを使うんですけど、そのダイヤも一枚一枚ちゃんと手入れして、管理する。あちこちに置きっ放しにしたり、違う場所にしまったりしない。 とても基本的なことですが、誰が次に使っても最高の状態で使えるように。そして、誰がつくっても、同じモデルは同じクオリティを担保できるように。うちの工房で働いている職人たちには、使う道具のメンテナンスは、責任を持ってやってもらっています。結局、具体的に削り出すのは道具ですからね。 個人的な作品で、時間がかかったりデザインがよくないのは、仕方がない。それこそ、日々精進です。それとは別で、江戸切子を産業として続けていくためにも、道具のメンテナンスは欠かせません。 * * * 「惚れ込むまでに時間がかかるんです」と、自身のこれまでを笑いながら話してくださった鍋谷さん。伝統工芸士として、工房の3代目として。穏やかな様子ながら、工房や江戸切子の未来もしっかり見据えた包容力のある言葉は力強く、熱い想いを感じました。後編では、ご自身の江戸切子に対する考えや、作品について伺います。
Exhibition 貴島雄太朗 │ 削紋 SAKUMON 2025年3月26日 このブログは2025年3月時点のものです。掲載商品の中には在庫のないものもございます。詳しくは「お問い合わせ」または、「公式LINE」からお気軽のお問合せください。3月26日(水)から、浅草合羽橋本店では「貴島雄太朗ガラス展」を開催します。TSUCHI-YA開店当初から看板商品として並ぶ代表作の「削紋 SAKUMON」シリーズを大展開。この企画では飲食店のお客様にもご注文いただける料理が映える器やお皿、部屋や店舗が華やぐ花器、照明まで幅広くご用意いただくことができました。 「削紋」の表情には涼しさや静寂を感じる一方で、お話しする時の貴島さんは楽しく温かいお人柄。その雰囲気は共に制作活動をされる依田麻紀子さんや生徒さんが通う青樹舎硝子工房から伝わってきます。 貴島さんが主宰する青樹舎硝子工房は1996年に開設。自然美を保存する風致地区の閑静な住宅街にあり、春には可愛らしいイチリンソウがお庭一面に咲く静かでゆっくりとした時間が流れる素敵な空間です。 はじめて貴島さんにお会いするため工房を訪れた時、実績、その作風からとても緊張した記憶があります。そんな私たちをとても温かく歓迎していただき予想よりも長い時間を過ごさせていただきました。 スタッフ全員に吹きガラス体験でご指導いただき、「作って楽しいガラスの世界」を知ることに。今でも制作、展示、教室とお忙しい中、新しいスタッフが加わる度にご指導いただいております。私たちの無理なお願いにも笑顔で応えていただけるTSUCHI-YAにとってよき相談相手の一人であり、とっても大切な方なのです。 貴島さんが 唯一の テーマとされる「 楽しいこと」は TSUCHI-YAがずっと大切にしたいことでもあります。暮らしの中の道具でもあり、美しさでもありますが「人の手」で生み出されるものづくりには、つくり手やつかい手が感じるこの「楽しさ」が絶対に欠かせないものだと考えています。 この企画をした塩見は、かっぱ橋のお店に立つ日々で 削紋の世界観が料理のプロに響くと感じていました。貴島さん×料理人によってさらに拡張させたいと考え貴島さんとの対話を重ねて準備してきました。海外でも人気の寿司を盛り付ける「寿司げた」やアミューズで目を惹きつけるプレートや小皿、徳利や酒器などテーブルを優雅に仕立てる手づくりならではのアイテムがたくさん並びます。 TSUCHI-YAの常設ではないグラスたちも並びます。ドリンクの色を愉しみたい方や、貴島さんのファンにも楽しんでいただきる内容です。 貴島雄太朗 │ 1996年東京練馬に青樹舎硝子工房を開設、主宰。吹きガラス教室講師。ガラス作家 として代表作「削紋」を始めとする自身の作品制作を行い、工業用ガラス製品、商業ディスプレイデザインなど企業からの依頼制作を担う。
Exhibition 光井威善ガラス展 2024年9月16日 9月14日(土)から、浅草合羽橋本店では「光井威善ガラス展」を開催。本企画で並ぶのは光井さんの代表作《Silence》。2022年開店当初、すぐに完売したグラス類に加え今回はぐい呑と片口、花器も制作いただきました。モノトーンとアクセントカラーのガラスが映し出す影までもが美しい作品たちです。光井さんの商品はこちらから ここでは光井さんのインタビューをお届けします。整頓された工房で、丁寧に質問にお答えくださる光井さんのお話しと姿勢からは、作品にも通じる静かな明るさと優しい強さが感じられました。 自分の中にある個性と余白 学生の頃はオブジェをつくっていたという光井さん。オブジェ作品から器作品までの軌跡を尋ねました。 T:どんなオブジェを作られていたんでしょうか? M:ボトルの胴体から目玉が飛び出ていたり、妖怪のような顔がついていたり、 ガラスの表面に絵を描いたり要素が多いですね。 とにかく何か変わったことをしなければと意識して足掻いていた感じですね。 T:今でも人と違うものを意識されたりしますか?M:今はもう意識していないですね。結果的に違っていたら良いとは思うけれど、個性を追い求めていた時よりも脱個性というか、むしろ諦めて自然体でいる今の方がふわっと個性が出る気がします。 T:生活の中で使われる器をつくる上で、つかい手の声を聴いたり取り入れたりされるんでしょうか? M:半分は聴きますね。自分の手元を離れるものなので、他の人の考えが入る余白は持っていたいですね。 「色を感じたい」、色への想い ガラスなのに柔らかい印象を与える《Silence》。組み合わせた色が溶け合うグラデーションが魅力。その光井さんの色彩感覚と選ぶ色について迫ります。 T:今回TSUCHI-YAから色の組み合わせをお願いしてサンプルをつくっていただいたんですが、その中でこちらが想定したものと異なる色が送られてきて「あれ?」ってなり、何度かやりとりがありました。ご自身が色弱ということはすでに公にされていますが私たちにはとても貴重な体験、経験となりました。どう自分の色彩感覚と向き合ってこられましたか? M:正解の色が何か自分には一生わからないからこそ興味がありましたね。 色弱補正眼鏡を手に入れたとし てもきっとそこで見えた色を信用しないと思います。 だから、何色にするかよりトーンを凄く意識します。濃さとか薄さとかを気にかけてつくっていますね。例えばクリスマスの赤と緑は補色で派手な組み合わせらしいけど、自分にとっては派手ではないんです。赤という色は割と一目置かれる色かもしれないけど僕にとっては一目置いていないし特別ではない。だから、濃淡で色の組み合わせを選んでます。自分が表現したいのはきっとモノトーンなので「カラーでモノトーンをつくる」という感じですね。 濃密なディテールから生まれる静けさ 《Silence》シリーズは、繊細な削りによって鮮やかな色から優しい色へと仕上げられていきます。自ら吹いたガラスを削る一手間について伺いました。T:《Silence》完成までどんな模索がありましたか?M:自分の心地よさを優先した結果生まれました。色は使ってみたいと思っていましたが、ポップでカラフルなガラスではなく、「静かだけど明るい」みたいなものをつくりたいと考えていました。 T:色は使っても落ち着いた感じにしたかった? M:そうですね、僕は人でも賑やかで明るい人より静かで明るい人が好きなんです(笑)。だからガラスに色をつけたままでは何か違うなぁと。色があってカラフルだけど静けさを表現したくて、表面を削ってみようと思って試していくうちにいい意味で色が打ち消されていき腑に落ちました。だから、自ずとタイトルも決まりましたね。 T:この繊細な削りに至るまでの試行錯誤は? M:表面を削るのはガラスのポピュラーな表現ですが斜めとか点とか試す中、雨っぽくなったんですよね。実は雨が好きなんですけど、それも影響したかも。だからシンプルに縦に真っすぐがしっくりきました。 T:削り線の微妙な揺れは意図的なんでしょうか? M:まっすぐ削ろうと思っても人の手だから絶対に揺らぎますよね。僕はその揺れが好きで、なぜならあの線は機械には出せない人間ならではの線だから。T:吹いている時と削る時、どちらが好きですか? M:吹きも夏はしんどくてやりたくないですけど、やっぱり溶けたガラスを触ってる時が好きですね。正直、削るのはしんどいです(笑)。《Silence》は細い線の集積だからすごく手間がかかる。もう無の境地で削ってます。 そして形へのこだわりへ...
Exhibition 早崎志保ガラス展 2024年4月11日 4月13日(土)より、浅草合羽橋本店では 「早崎志保ガラス展」を開催。 当店でも人気の「てんてん星」シリーズのほか、フュージングやパート・ド・ヴェールなど、様々な技法を用いた作品たちが並びます。 ぱっと花開くガラス まず目を引くのが、グラスに咲く色とりどりの花々。色ガラスを重ねることで、花びらや花芯の色合い、ひとつずつに個性があります。ガラスを発色させるために含まれる金属が反応して、予想していなかった色が生まれることも。制作過程でできる底面のポンテ跡はつるりと磨かれ、細部へのこだわりやつかい手への配慮を感じます。 いろいろな技法、広がる表現 吹きガラスを中心に作品を作られていますが、板ガラスを電気炉で溶かし合わせるフュージング、石膏型にガラスの粉や粒を流し込んで焼成するパート・ド・ヴェールなど、表現は多岐に渡ります。技法は異なれどそこには早崎さんの表現の軸があり、どの作品からもガラスへの情熱が伝わってきます。 自然を見つめる目 そして早崎さんの多彩な作品に共通するのは、自然への優しい眼差し。夏の青い空、海辺に落ちた花、陽の光で輝く雪。誰もが一度は目にしたことのあるような何気ない景色は、早崎さんの目を通して、きらきらとしたガラスに姿を変えます。 眩しい朝日の中と夕焼けの赤い光の中では異なる表情を見せてくれるガラス。スマホの画面からだけでは伝えきれないその魅力をぜひ、店頭で体験いただければと思います。素材の特徴を生かしながら、生活の中で様々な景色を見せる早崎さんの作品は4月13日(土)から浅草合羽橋本店でご覧いただけます。みなさまのご来店を心よりお待ちしております。 早崎志保│Shiho Hayazaki岡崎市に個人工房を構え、吹きガラス技法を中心に器やオブジェを制作。季節を映すモノづくりを心掛けられています。1997年愛知教育大学 総合造形コース ガラス専攻卒業1998年富山市立富山ガラス造形研究所研究科を卒業1998年〜2007年岡崎ガラス工房・葵 ガラス工芸指導員2013〜1998年名古屋芸術大学非常勤講師2008〜現在Glass Studio「ガラスごこち」主宰(岡崎) 早崎さんの商品はこちらから
日本酒 │ 美硝ができるまで 2024年3月20日 ガラス専門店がなぜ日本酒を? TSUCHI-YAは「日本の丁寧を世界へ」という想いを、日本の切子やガラス工芸を通して伝えてきました。2023年から増えてきた海外からのお客様の中で和食レストラン、寿司店を営む方々が日本酒を提供する際のハンドメイドのぐい呑や片口を探される機会によく出会うようになりました。そこで、世界で注目される和食や日本酒を通して日本のガラス工芸を世界へ発信したいと考えました。そして、飲み終わった後にウォーターボトルとして使っていただけるリユースを目指した酒瓶とするため新たにデザインを始めました。 リユースされるラベルレスの酒瓶 「純米大吟醸│美硝」の瓶はレガロ720という 製造は山村製壜所、販売はきた産業の既存品です。特徴は製壜難易度が高い、口元へ細くなる形状。そのシルエットの美しさに魅了されました。酒店や居酒屋で目にする日本酒はこれらのガラス瓶に酒蔵や酒名のラベルを貼ったパッケージがほとんど。しかし私たちは、リユースを目的としているため、ラベルを貼らないボトルデザインを目指しました。※ボトル背面には弱粘着の品質表示ラベルを貼付 デザインの原点は当店の人気商品 美硝のボトルデザインは当店の人気商品である、「フロストウォーターボトル」が原型。こちらはレガロ720の全面をフロスト加工した、滑らかな手触りのウォーターボトルです。これまでもガラス瓶やボトルはリサイクル資源として循環するシステムが構築され普及してきましたが私たちは、既成のガラス製品を消費するのではなく生活の中で持続的に使えるものを、と考えました。そしてReadymade Craftというコンセプトで企画。その第一弾が 「フロストウォーターボトル」です。第二弾では、実験で使われる毛細管の三角軸によるオリジナルのガラスペンも発表しました。飲食店やペットボトルで水を飲まれるお客様の、「テーブルの雰囲気を壊さない水差しが欲しい」 という声に応え、フロストウォーターボトルは開店来の人気商品となりました。 手仕事によって実現したデザイン 瓶をフロスト加工することは当初からの目標。それは、半透明の面と透明面のコントラストにより水がより美味しく感じられると考えていたからです。しかし、量産のフロスト加工は液体に漬け込むことで瓶全体を半透明にするため、ラベルの形を残したり、半透明にするマスキングができないのが常識でした。そこで、サンドブラストのガラス作家さんに会い、手作業のフロスト加工をお願いして回りました。技術的には可能でも、時間がかかりすぎるため難航。 最終的には、このプロジェクトに賛同いただいたガラス作家の多田えり佳氏が引き受けてくれました。 新色「深海」は無名の規格外品 次に、美硝でご好評いただいたガラス色「深海」。本来、この色のレガロ720は流通していません。山村製壜所では複数の色の瓶が製造されていますが、年間で各色の製造スケジュールは決められています。例えば、緑色から青色に製造を切り替えていく中で色が変化し続けている中間色、それが「深海」です。色が変化し続けていくため、同じ色の瓶が求められる量産飲料では採用されたことはありませんでした。山村製壜所はこれをなんとか活用したいと考え試作。きた産業で目にした私たちは、美しさに魅了され、すぐにウォーターボトルの新色にとお願いしました。 ウォーターボトルで食卓を素敵に 酒瓶をデザインする上では量産可能なことも重要。全面をフロスト加工することは非現実的でした。発想を逆転しラベルだけをフロスト加工することに。量産加工は、ガラス作家の関根さお里氏に依頼。結果的に、ガラスの透明感とラベルの存在感によってウォーターボトルとして商品化を望む声も出ました。現在、フロストラベルボトルとして計画中です。今後もこの「Readymade Craft」のコンセプトで世の中に既にあるものを手しごとで価値をあげ、日本の丁寧を世界へ伝え続けたいと考えています。 <純米大吟醸│美硝>製壜:株式会社山村製壜所瓶卸:きた産業株式会社加工:関根さお里(青樹舎硝子工房)日本酒:河忠酒造株式会社この度、美硝が「ガラスびんアワード2024」で最優秀賞を受賞いたしました!
Exhibition 印象派のようなガラス展 2023年11月22日 11月25日(土)より、浅草合羽橋本店では、「印象派のようなガラス展」を開催。東京都のガラス作家、鈴木伊美さんは、「ほっ」と息が抜けるような表現を制作のテーマにされています。今回は息抜きに訪れた植物園の花や草木の色彩や香りの記憶から着想を得た新作が並びます。 自由な表現を支える技術 吹きガラスの技法を用いており、有機的な形と柔らかな色合いが特徴的。そして丁寧な加工や削りによって端正で繊細なイメージも感じとれます。詩的で情緒的なタイトルも印象的です。 瓶というモチーフ 膨らんだ部分を人の体のお腹に見立てた「気持ち入れ」という作品シリーズ以降繰り返し制作している形だそう。控えめに膨らんでいたり、丸くころんとしていたり。どんな気持ちをため込んでいるのかあれこれ想像しながら、お気に入りを見つけてみてください。 印象を形にする 植物園を歩く中で感じた花の香りや風の音、柔らかく降り注ぐ陽の光。鈴木さんが息を吹き込むことで、ガラスは自由に形を変えて、目には見えない印象をもそっと私達に伝えてくれるようです。 「印象派のようなガラス展」は11月25日(土)〜12月15日(金)まで。鈴木伊美さんが撮影された神代植物園のお散歩写真が背景に流れる店内でみなさまを心よりお待ちしております。 鈴木伊美神奈川県生まれ1996年 武蔵野美術大学工芸工業デザイン科を卒業。1998年 富山市立富山ガラス造形研究所造形科を卒業2000年 富山市立富山ガラス造形研究所研究科を卒業。