ガラス専門店がなぜ日本酒を?
TSUCHI-YAは「日本の丁寧を世界へ」という想いを、
日本の切子やガラス工芸を通して伝えてきました。
2023年から増えてきた海外からのお客様の中で
和食レストラン、寿司店を営む方々が
日本酒を提供する際のハンドメイドのぐい呑や片口を
探される機会によく出会うようになりました。
そこで、世界で注目される和食や日本酒を通して
日本のガラス工芸を世界へ発信したいと考えました。
そして、飲み終わった後にウォーターボトルとして
使っていただけるリユースを目指した酒瓶とするため
新たにデザインを始めました。
リユースされるラベルレスの酒瓶
「純米大吟醸│美硝」の瓶はレガロ720という
製造は山村製壜所、販売はきた産業の既存品です。
特徴は製壜難易度が高い、口元へ細くなる形状。
そのシルエットの美しさに魅了されました。
酒店や居酒屋で目にする日本酒はこれらのガラス瓶に
酒蔵や酒名のラベルを貼ったパッケージがほとんど。
しかし私たちは、リユースを目的としているため、
ラベルを貼らないボトルデザインを目指しました。
※ボトル背面には弱粘着の品質表示ラベルを貼付
デザインの原点は当店の人気商品
美硝のボトルデザインは当店の人気商品である、
「フロストウォーターボトル」が原型。
こちらはレガロ720の全面をフロスト加工した、
滑らかな手触りのウォーターボトルです。
これまでもガラス瓶やボトルはリサイクル資源として
循環するシステムが構築され普及してきましたが
私たちは、既成のガラス製品を消費するのではなく
生活の中で持続的に使えるものを、と考えました。
そしてReadymade Craftというコンセプトで企画。
その第一弾が 「フロストウォーターボトル」です。
第二弾では、実験で使われる毛細管の三角軸による
オリジナルのガラスペンも発表しました。
飲食店やペットボトルで水を飲まれるお客様の、
「テーブルの雰囲気を壊さない水差しが欲しい」
という声に応え、フロストウォーターボトルは
開店来の人気商品となりました。
手仕事によって実現したデザイン
瓶をフロスト加工することは当初からの目標。
それは、半透明の面と透明面のコントラストにより
水がより美味しく感じられると考えていたからです。
しかし、量産のフロスト加工は液体に漬け込むことで
瓶全体を半透明にするため、ラベルの形を残したり、
半透明にするマスキングができないのが常識でした。
そこで、サンドブラストのガラス作家さんに会い、
手作業のフロスト加工をお願いして回りました。
技術的には可能でも、時間がかかりすぎるため難航。
最終的には、このプロジェクトに賛同いただいた
ガラス作家の多田えり佳氏が引き受けてくれました。
新色「深海」は無名の規格外品
次に、美硝でご好評いただいたガラス色「深海」。
本来、この色のレガロ720は流通していません。
山村製壜所では複数の色の瓶が製造されていますが、
年間で各色の製造スケジュールは決められています。
例えば、緑色から青色に製造を切り替えていく中で
色が変化し続けている中間色、それが「深海」です。
色が変化し続けていくため、同じ色の瓶が求められる
量産飲料では採用されたことはありませんでした。
山村製壜所はこれをなんとか活用したいと考え試作。
きた産業で目にした私たちは、美しさに魅了され、
すぐにウォーターボトルの新色にとお願いしました。
ウォーターボトルで食卓を素敵に
酒瓶をデザインする上では量産可能なことも重要。
全面をフロスト加工することは非現実的でした。
発想を逆転しラベルだけをフロスト加工することに。
量産加工は、ガラス作家の関根さお里氏に依頼。
結果的に、ガラスの透明感とラベルの存在感によって
ウォーターボトルとして商品化を望む声も出ました。
現在、フロストラベルボトルとして計画中です。
今後もこの「Readymade Craft」のコンセプトで
世の中に既にあるものを手しごとで価値をあげ、
日本の丁寧を世界へ伝え続けたいと考えています。
<純米大吟醸│美硝>
製壜:株式会社山村製壜所
瓶卸:きた産業株式会社
加工:関根さお里(青樹舎硝子工房)
日本酒:河忠酒造株式会社
この度、美硝が「ガラスびんアワード2024」で
最優秀賞を受賞いたしました!